あの日以来一度も目を覚まさず眠り続ける賀子の顔を見て、どうしてもっと構ってやらなかったのかと何度も何度も後悔した。

失って自分がどれだけ愚かだったのかを気付いた自分は、どうしようもない大馬鹿者だ。

七つ歳下の妹、賀子。

仲が悪い訳ではないけど、いつもひょこひょこ俺の後ろを付いてくる賀子があの頃はちょっと煩わしかった。

だからいつも邪険にしてろくに、遊んでやることもなく泣かせてばかりの毎日。でもほかの奴らだって家族の話になれば兄弟の愚痴ばっかで、それが俺の日常で、まさかほんの数分で崩れ去るなんて思ってもみなかった。


「にーに、どこいくの?」


あれは俺が12歳、賀子が5歳だった。初等部は夏休みに入って俺は実家に帰ってきていた。

玄関で靴に履き替えてショルダーバッグの中の財布とゲーム機を整理していると、廊下の奥から賀子がパタパタと走ってきた。

今朝は俺が人形遊びを断ったせいで賀子が泣いて母さんに告げ口し、「どうしてそんなに意地悪するの!」と叱られたばかりで気分が悪く、話しかけてくる賀子を無視する。


「ねー! どこいくのー!」


俺のティーシャツの背中を掴んだ賀子は、拗ねた口調で服を引っ張る。