「────だよ」 消え入りそうな声が何かを答えた。 慶賀くんがゆっくりと顔を上げる。光の消えた瞳、もう私たちのことも薫先生のことも映していない。表情もない、何の感情も宿さない。 ほんの数分前まで一緒に笑いあっていた慶賀くんだとは思えないほどの別人だった。 「俺がやらないと妹が────賀子が死ぬんだよ」