駆け寄った神職さまが薫先生の肩を叩く。ゆっくりと立ち上がった薫先生の代わりに、複数の神職さまによって慶賀くんは拘束される。
目の前で何が起きているのか、まだ理解できなかった。
「嫌になっちゃうよ。これまでに起きた事件から、真っ先に疑ったのは自分の教え子たちだった」
薫先生がゆっくりと振り返って私たちを見回した。
「今日の合同実習は、各学年各クラス違う時間違う場所を伝えたんだ。君らには稲荷山って伝えたよね。それで、さっき稲荷山に待機させておいた神職から、烏天狗の天司が現れたって連絡があった」
情報が、漏れている。
もし本当に実習に向かっていれば、また八瀬童子の里の時のような戦闘になっていたかもしれない。
「だけど……でも、まだ慶賀って確証がある訳じゃねぇんだろ!? 慶賀はこんな風に言ってるけど、確証がねぇなら違ぇだろ!」
泰紀くんが薫先生に詰め寄った。薫先生は息を吐いてひとつ頷く。
「ああそうだね。ただ、一つだけ慶賀が内通者だという疑いが強くなった出来事が一つだけあった。慶賀────瓏が暴走した時、どこにいた?」
瓏くんの暴走、一学期の奉納祭の時のことだ。
瓏くんは何かに背中を傷付けられ力を抑えるための呪印が解けてしまい、暴走してしまった。その結果山が焼けて、聖仁さんは酷い火傷を負った。



