慶賀くんの前に立った三人の濃い表情に戸惑いの色が現れる。どの事件も自分たちには深く関わりのある出来事だ。


「黒幕って……二学期の時に薫先生のことぶっ飛ばしたあの眼帯の兄ちゃんか?」

「そう、その眼帯ね。本名は神々廻芽、俺の双子の兄貴。芽は先の戦で本庁と生家のわくたかむの社を半壊させたあと俺たちを裏切って空亡側についた。狙いは本庁を壊滅させること」


あまりにもさらりと明かされた事実に、私たちはこれでもかと目を見開いた。私たちの周りを囲っていた神職さまたちの中にも、その事実を知らない人が何人かいたらしい。

教室の空気が揺らいだ。


「証拠はあるんですか?」

「慶賀だって証拠はないかな。まだ疑い程度だから。だから慶賀には、今すぐ否定してほしいんだけど」


薫先生の言葉にみんなが勢いよく振り向いた。視線の先の慶賀くんを祈るように見つめる。


「な、なんだよ〜。そうだよな、俺らの中で一番バカな慶賀が内通者なんて器用なこと出来るわけないよな。慶賀はこっち側だよ」

「もー薫先生、言い方が悪いんだけど! 慶賀が疑われてるだけなんだったら、最初からそう言ってよね。慶賀、ほらこっち」

「そうですよ。慶賀が内通者なわけないでしょ? な、慶賀。早く"違う"っていいなよ」


三人がぎこちない笑みを浮かべて肩を叩く。慶賀くんは頑なに顔をあげなかった。