「おい巫寿」


週が開けた月曜日。二時間目の授業が終わってロッカーに教科書を片付けていると、恵衣くんに話しかけられた。振り返ると相変わらず難しい顔をした恵衣くんが私を見下ろしている。


「どうしたの?」

「次の授業、俺と席代われ」

「え?」


唐突な申し出に目を瞬かせた。

私たちの学年は生徒数が少ないので決められた席がない。ただ最近は何となく席が固定されるようになって、最前列が鞍馬の神修の三人、二列目が慶賀くんに私に嘉正くん、三列目が残りの三人で恵衣くんは一番廊下に近い端っこの席に座っている。

たまに気分転換で交代するしたりするので、代わること自体は問題ないのだけれど……。


「次って詞表現実習だから、薫先生たちが来たらすぐに移動になるよ?」

「分かってる」


分かってて席の交代を申し入れてきたということは、余程前の席にこだわりがあるようだ。本庁の視察が入ると言っていたし、真剣に実習の説明を聞きたいのかもしれない。

でもだとしたら、ど真ん中の席の私ではなくて最前列の真ん中である瓏くんに変わってもらえばいいのに。

ともあれ断る理由もないので二つ返事で承諾し、最後列の隅っこに座った。