私たちの真ん中にある人生ゲームを覗き込んだ薫先生は「お、懐かしい」と言いながら私たちの輪の中に混じる。


「今日のお仕事はもう終わったんですか?」


泰紀くんの借金の数を数えながら「うん」と頷く。


八瀬童子の里の一件で、禄輪さん達と共に里に駆けつけた薫先生。駆けつけたメンバーの中で一番若いから書類仕事も得意だろうという理由で本庁への報告やら報告書やらを全て任されてしまったらしい。

それに加え"また"私たちが関わっていたこともあり、担任の薫先生はまた偉い人達に怒られることになったのだとか。

『何かが起きる度に君らがいるのはなんで?って前に聞いたけど違ったね。君らがいる場所で必ず何かが起きるのはなんで?』

説教こそなかったものの、疲れ果てた様子でそう尋ねられ肩を竦めたのは記憶に新しい。一週間経ってようやく落ち着いたようで一安心だ。


「明日の実習もついてくから、今日は鞍馬の神修に泊まる予定だよ。折角だし恋バナでもする?」

「誰がセンセーと恋バナなんてすんだよ! てか俺の借金数えんな!」


泰紀くんは薫先生の手元から赤い紙幣をもぎ取った。


「ひどいなぁ。二学期は皆ずっとこっちにいたんだし、久しぶりに色々喋りたいんだよ。何かないの? 薫センセーに相談したいこととか、聞いて欲しいこととか。センセーらしいことしたいんだけど」

「"構ってちゃん"か」


来光くんのツッコミにみんながどっと笑う。久しぶりの和やかな雰囲気に皆の頬が緩んだ。