それはそうと。


「どうして薫先生がそれを伝えに来たんですか?」


授業のことはいつも河太郎先生が事前に伝えてくれるし、わざわざ薫先生が伝えに来る必要は無いはずなのに。

首を捻ってそう尋ねると、「良い質問」と指を鳴らした薫先生。当たりを見回したあと、ちょいちょいと人差し指手をを曲げて私たちを近くに集める。

みんな不思議そうに顔を寄せ合った。


「本庁の偉い人たちがお忍びで授業を視察するんだって。恵衣と来光は卒業後は本庁に就職希望でしょ。アピールするチャンスじゃない? それに実践実習の成績は実技の昇階位試験で加点要素になるから、今のうちにどんどん成果残しといた方がいいよ〜」


取っ組み合いを止めて目の色を変えた本庁志望組の二人。

なるほど、この情報を伝えるために薫先生はわざわざ私たちの所へ来たのか。というか「お忍びの視察」なのに私たちに伝えてしまっていいんだろうか。


「薫先生、"お忍び"やのに言うてしもてええんか?」

「あはは、ダメに決まってんじゃん。可愛い教え子のために危険を冒してるんだから、ちゃんと成果出してよね」


相変わらず無茶苦茶だ。