言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


静かになった部屋を見渡し、ひとつ息を吐くとお母さんの段ボール箱に手をかけた。

中を覗くとおばあちゃんの言った通り、本や服、日用品から何かの書類まで色んなものが入っていた。頭が魚で体はスーツを着たよく分からないキャラの置物やサボテンのフェイクフラワーが植えられた鉢もあった。

写真立てを除き無駄なものが一切なかったお父さんとは正反対だ。

一番上に乗せてある綺麗に畳まれた羽織を手に取って広げてみる。鶴の模様に前合わせが赤い紐で留められたそれは、神楽の際に巫女が身につける千早(ちはや)だ。

腕を通してみると少し大きい。記憶の片隅にある優しい匂いがする。


両親の友人から聞いた話では、お母さんは本庁で働いていたのでほとんどがデスクワークだったみたいだけれど、学生時代から舞の名手だったのと鼓舞の明を持っていたため、舞手としてあちこちから仕事の依頼があったらしい。

恐らく本庁のロッカールームにでも置いていたのを、同僚の人が持ってきてくれたんだろう。


千早を脱いで段ボール箱漁りを続ける。やはりお父さんと同様、過去を調べるのに役立ちそうなものはなさそうだ。


おばあちゃんも職場の荷物や友達に貸し借りしたものだって言っていたし仕方ないか。


少し残念に思いながらも出した物を片付けていく。すると本と本の間に挟まっていた一冊の小さなノートがするりと膝の上に滑り落ちた。

拾い上げて確認すると、桜色の革っぽい表紙に英語で「schedule」と書かれてあった。