実家には両親の遺品がほとんどないのは知っていたし、戦が終わったその日のうちに駆けつけたお兄ちゃんに「怪我が治ったら死ぬほど怒るから覚悟しときなよ」と怖い顔で脅されたのでお兄ちゃんに連絡はしていない。
どうしたものかと悩んだ末駄目元でおばあちゃんに連絡を取ってみると、「予定がなければ今からいらっしゃい」と招いてくれた。空亡戦が終結したあと、両親の遺品のほとんどは二人の実家であるうずめの社へ届けられていたらしい。
「────と言っても、大したものはないの。空亡戦が落ち着いた後、色んな人達が少しずつ届けてくれてね。職場の私物や二人が友人に貸していたものとか。本当に些細なものだから巫寿ちゃんの探し物が見つかるといいんだけれど」
押し入れの奥から段ボール箱を二箱引っ張り出してきたおばあちゃん。ガムテープの封には「一恍」と「泉寿」の文字がある。押し入れの奥に仕舞われていた割には埃が積もっていることもなく、おばあちゃんが丁寧に保管してくれていたことが分かる。
まずはお父さんの段ボール箱を開けた。
「一恍の方は職場の私物がほとんどね。そうそう、見てちょうだいよこれ。職場の机の上に飾ってあったんですって」
おばあちゃんは箱の中から何かを取り出す。茶色いフレームの写真立てだった。
受け取って、ひっくり返す。その中に移る人物に思わず吹き出してしまった。
咲き誇る桜の木の下、振り向きざまを切り取った写真。満面の笑みで髪をかきあげるその美しい女性は、紛うことなき私のお母さんだ。



