言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


日本には「三種(さんしゅ)神器(じんぎ)」と呼ばれる宝物(ほうもつ)が存在する。小学校の社会の授業で習う電化製品の方ではなく、日本神話の中で語られる天孫降臨の際に授けられた三つの宝物だ。

八咫鏡(やたのかがみ)草薙剣(くさなぎのつるぎ)八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)の三つがそれにあたり、神話上では天照大御神か瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に授けとされている。

今は代々天皇家がそれを受け継ぎ、日本を導き統べる者の象徴となっている。

────というのが、授業で習った知識であり私の知る三種の神器だ。


手に持つのが怖いけれど地面に置くのも怖いということで、私が袖に入れていた白い手ぬぐいの上に置かれた國舘剣を皆で囲う。


「現世の三種の神器と対になるように、幽世にも三種の神器が存在するって昔母さんから聞いたことがある。ただ、それこそ神話上の宝物で誰もこれまで目にしたことはないって」


腕を組んだ嘉正くんが未だに信じられないと言った顔で國舘剣を見下ろした。


「俺もばーちゃんに聞いた事あるぞ。現世の三種の神器が導くための宝物なのに対して、幽世のは滅ぼすためのものだって。國舘剣も本来は"國を絶つ剣"って書くけど、縁起が悪いから別の漢字が当てはめられたんだってさ」


國を絶つ剣で國絶剣。確かに縁起が悪すぎる。

改めて剣をよく見てみた。黒光りする鞘には恐らく十二神使の妖としての姿が彫られていて、柄には霞雲に隠れた満月の彫刻が細かく施されている。


「神話上では、確かに國舘剣はかむくらの御祭神が持ってる事になってたはずや。そのネーチャンがほんまに十二神使の騰蛇(とうだ)なら、これは間違いなくホンモノやろな」