言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


禄輪さんの言葉は嘘だ。

私は伊也からなぜ里を襲ったのかを聞いた。今回の襲撃の彼らの狙いは里の戦力を確保すること。里の戦力を神々廻芽の配下に取り込むことが目的だ。わざわざ内通者として黒狐族に潜り込んでいた黒貫さんがその事情を知らないわけがない。

それに何より、何も知らないまま"かむくらの神職"達が表に出てくるはずがない。かむくらの神職達は今回の一連の襲撃が神々廻芽が企てたものだと既に掴んでいるんだ。


「巫寿ちゃんは伊也と会話したと聞いた。少し落ち着いたら詳しい話を聞かせて欲しいんだ」


はい、と頷くと背中の皮膚が引き攣るような痛みが走り顔を顰める。

禄輪さんは顔を顰めて「今日はここまでだな」と立ち上がる。


「巫寿はもう少しゆっくり休みなさい。お前たちも体は疲れているだろうから、うろちょろしてないでせめて座っていなさい」


私たちの返事を確認すると、禄輪さんはその分厚い手で私の頭をぐしゃりと撫で黒貫さんと共に神楽殿を出て行った。

鬼市くんがひとつ息を吐く。


「俺も頭領を手伝ってくる。そばに居てやれなくて悪い、巫寿」


腰を浮かせた鬼市くんが申し訳なさそうに私の顔を覗き込んだ。


「巫寿が文鬼先生と鬼子を守ってくれたと聞いた。気を失う前に鎮火祝詞で庇角院の火も消してくれたんだとも」


鬼市くんの言葉で、気を失う直前に鎮火祝詞を奏上したことを思い出す。ほぼ意識のない状態だったけれど、ちゃんと効果は発揮したらしい。


「里を代表して礼を言う。本当にありがとう」


鬼市くんは私の手を取って力強く握る。冷静な瞳に涙の膜が張っていた。