「本当はもう少し早い段階で情報は掴んでいたんだけれど、俺が内通者だってことがバレてしまってね。いやぁ遅くなって面目ない」
けらけらと笑った黒貫さんは右手を上げて頬を掻こうとしたけれど「あっ」と手を止める。はらりと落ちた袖から見えた手は包帯が巻かれて痛々しい。
「天司に指ちょんぎられたの忘れてた」
ひ、と皆が息を飲んだ。
呆れた顔をした禄輪さんが咳払いをする。
「やめろ黒貫。子供らが絶句してる」
「悪い悪い。でもこれは名誉の負傷だから引かないでくれると嬉しい」
内通者だとバレて指を切られた、それだけでも十分に黒貫さんがどんな状況に置かれていたのかが想像できて、なんとか頷くので精一杯だった。
「とにかく、なんとか逃げ出せたから禄輪たちと連携して援護しに来れたんだ。皆が奮闘してくれたおかげで黒狐の大半は捕えられた。一番捕まえたかった奴らには逃げられたけれど」
恐らく伊也や天司のことだろう。彼らは相当な実力を持っている。そう簡単には捕まらないだろう。
「結局、黒狐族の狙いってなんだったんだ?」
泰紀くんが手を挙げて質問した。
禄輪さんと黒貫さんの顔が僅かに曇る。
「……まだ分からない。これから八瀬童子族が主体となって取り調べがあるから、ゆくゆくは判明するだろうな」
なるほどなぁと納得した様子の皆に、大人二人はそっと視線を逸らした。



