「悪いな黒貫。巫寿が目を覚ましたんで紹介しておこうと思って。ほら、一恍と泉寿の」
禄輪さんがそうやって紹介するということは、大抵両親のことを知る元かむくらの神職と私を引き合せる時だ。
つまりこの人も。
黒貫さんは少し目を丸くして私の顔を見ると、「そうだったか」と懐かしいものへ思いを馳せるように目尻を下げた。
「初めまして巫寿ちゃん。一恍達とは旧知の仲でね、君のことは泉寿ちゃんの腹の中にいた頃から知ってるよ」
「ということは……あなたも」
ああ、と黒貫さんははにかんだ。
「妖狐の妖、黒狐族の黒貫だ。よろしくね」
黒狐族────黒狐族!?
目を剥いた私の反応に、周りのみんなはあそれはそれはおかしそうにケラケラと笑う。
訳が分からなくて禄輪さんを見上げる。楽しそうに笑っていた禄輪さんが「悪い悪い」と片手を上げた。
「嘉正たちに説明した時と全く同じ反応だったもんでな。黒貫は黒狐族だが、先の戦の頃から私たちのために"内通者"を担ってくれている」
「内通者……」
「そうだ。今回の一件も黒貫が情報を流してくれたおかげで我々が八瀬童子の里に駆け付けることができたんだ」
なるほど、そういう仕組みだったのか。
里が襲われた時、恐らく真っ先に日本神社支庁と本庁へ連絡を取っていたはずだ。それなのに本庁からの援軍が来るよりも前に禄輪さんたちがタイミングよく駆け付けた。それは黒狐族の内部をさぐっている仲間がいたからなんだ。



