「目が覚めたのか、巫寿」
聞き馴染みのある声にハッと振り返る。私の姿を確認するなり、その人の顎髭に隠れた口元が弧を描いた。
「禄輪さん……! 皆も!」
禄輪さんの後ろからひょこっと顔を出したクラスメイトたち。あっという間に皆に囲まれた。
「起きてて平気なのかよ!」
「ここに担ぎ込まれてきた時、すっごい酷い怪我だったんだよ!」
「無茶は禁物だ、横になっておけ」
鬼市くんに甲斐甲斐しく横に寝かされ、冷やしちゃダメだよと嘉正くんに肩まで布団をかけられる。貧血気味なんじゃない?と水を差し出す来光くんに、何かいるもんあるかとオロオロする泰紀くんたち。
思わず笑みが浮かぶ。どこにも怪我はなく元気そうな顔に安堵のため息が零れる。
皆が無事でよかった。
「あのそれで、状況が全く分からないんだけど……」
「説明は黒貫に頼むとしよう。誰かあいつを呼んできてくれ」
黒貫?
親しげにその名前を呼んだ禄輪さん。皆もちゃんとその人物を把握しているようで「はーい僕行きます」と来光くんが立ち上がると、すぐに誰かを連れて戻ってきた。
男性だった。歳は薫先生と同じくらいだろうか。といっても彼の黒い短髪の隙間から生えている獣耳から、彼が人間ではないことが推測できたので恐らく数百歳は歳を重ねているんだろう。
どこにでもいるような好青年、と言った感じのその人は「禄輪呼んだか?」と親しげに話しかける。



