誰かが額にかかった前髪をそっとはらってくれた。その優しい手つきに深い意識の底からふわりと浮上する。ゆっくり開けた目に白い光が染みた。
視界いっぱいに映った赤い瞳と赤い髪。相変わらず表情は乏しいけれど、不安と心配で揺れる瞳が彼女の心情を強く語っていた。
「眞奉……」
「おはようございます、巫寿さま。目が覚められたようで何よりです」
体を起こそうと力を入れてみたけれど、気が遠くなりそうな激痛に息が止まる。脱力すると後頭部に程よい柔らかさを感じる。
どうやら眞奉の膝を借りて眠っていたらしい。
礼を言いつつ目だけそろりと動かせば、神楽殿の壁が見えた。私と同じように床に寝かされた神職さま達が並んでいて、本巫女さまたちが忙しなく走り回っている。
ぼんやりする頭が次第にクリアになっていくにつれサァッと顔から血の気が引いて、痛みも忘れて飛び起きる。
眞奉の胸に飛び付いた。
「ま、眞奉! 外の状況は!? 私たしかあの時気を失ってッ」
「問題ございません。滞りなく事後処理が進んでおります」
「事後処理? 黒狐族は? 伊也や天司はどうなったの?」
確か私は最後、烏天狗の天司が鬼子ちゃんたちに放とうとした妖力を防ぐために略拝詞を奏上した。それで伊也に後ろから袈裟懸けに斬り掛かられて、その後気を失った。
それで────そうだその時確か。



