力強いその声に張り詰めていたものが弾けた。情けないくらいくしゃくしゃに顔を歪めて必死に首を持ち上げる。
風に揺らめく真っ白な袴には同じく白で染め抜かれた"ほだかの社"の社紋。広い胸に波打つ黒髪。
長い髭に隠れた口元が怒りでぎゅっと結ばれ、優しげな垂れ目を不安と心配で染めて私を見つめている。
零れた涙は安堵の涙だった。
「遅くなってすまん巫寿。よく頑張ったな……!」
返事は出てこなった。胸が詰まって上手く喋れなかった。代わりに必死に何度も頷いて答える。
禄輪さんが、来てくれた。
「残った黒狐族を掃討してくれ! 飛扇と薫は私とこいつらの相手だ!」
飛扇先生と薫先生も来ているの?
遠のきそうになる意識の中、辺りを見回す。鮮やかな紫色の袴が沢山見えた。知っている顔がいくつかあった。
お正月にほだかの社で挨拶をした人や、夏祭りの手伝いで会った人。いつの日か見せてもらった集合写真に写っていた顔に面影のある人。
次々と神職が敗れていく中、仲間を守るために立ち上がった神職たち。空亡に最後まで立ち向かった義勇軍。
彼らは────。
「かむくらの神職……」
戦況が一変するのが目に見えて分かった。あちこちから力がぶつかり合い弾ける音が聞こえてくる。一切の隙を見せず猛攻で畳み掛けた。
すごい、これがかむくらの神職の実力なんだ。



