確かに大切な家が燃えて圧倒的な強さの敵も現れた。誰から見ても絶望的な状況かもしれない。それでも今を変えられるとしたら、それができるのは鬼子ちゃんだけだ。
冷静な鬼子ちゃんが飛び出すように文鬼先生を助けに行った。庇角院の子供たちと笑顔で接していた。家を燃やされて我を忘れるほど取り乱した。
彼女にとって庇角院がどれほどのものなのかは、それだけでもよく分かる。
「私が、守るって決めたのに」
鬼子ちゃんの呟いた声が聞こえた。
希望を失くした言葉に奥歯を噛み締める。
「遅くないよ! まだ守れる!」
「もう……無理よ。だって全部燃えた」
「今ならまだ何とかなる!」
「貴方に何が分かるの」
淡々とした声。強い拒絶を感じる。
「里もめちゃくちゃで神職さまたちも次々倒れてる。きっとこの戦も負ける。黒狐の支配下になって、家を失った私たちはどうなるの?」
それは、と言葉に詰まる。
その時、「クソッ!」と悪態と呻き声が混じった声がした。反射的に振り向くと、地面に倒れ込む信乃くんと恵衣くんの背中が見えた。
天司は倒れ込む二人を無表情で見下ろし、恵衣くんの背中を踏みつける。ピクリとも動かない姿に息の仕方を忘れる。



