ほぼ無意識に眞奉が落とした短剣を拾い上げた。甲高い音と激しい衝撃、重い一太刀に両手が痺れ柄を握る指が白くなる。
眞奉が攻撃してこないのを逆手にとられた。
「ほんまあんただけは殺す、何がなんでもやッ!」
焼け付くような殺意に身が竦む。汗がこめかみを伝った。
合わさった部分がガチガチと震えて音を立てた。薄い刃が鼻先に迫る。力の差はさっきで思い知った。力勝負になると私一人じゃ敵わない。
眞奉の様子は確認できない。すぐに戻ってこないということは大きなダメージを受けているのだろう。
烏天狗の天司と交戦している恵衣くんたちの様子も分からないけれど、足裏から響いてくる衝撃と切羽詰まった声に手こずっていることは分かる。
ほんの僅かな瞬間でもいいから、誰かが隙を作ってくれれば。
必死に視線だけを動かした先に、絶望に染った瞳を見つける。そうだ、彼女なら。
「鬼子ちゃん……ッ!」
反応はない。怪し火に焼かれてめらめら燃え上がる庇角院を呆然と見上げている。文鬼先生が鬼子ちゃんの体を揺するけれど反応はない。すっかり戦意を喪失している。
でも今この状況を変えれるとするなら、鬼子ちゃんに隙を作ってもらうしかない。
「鬼子ちゃん! お願い助けてッ!」
必死に名前を呼ぶ。
濁った瞳に光は宿らない。何もかもを諦めてしまったような顔だった。



