怒りにむき出された歯が弧を描いた唇で隠れた。
その瞬間、手先がビリッと痺れるような緊張感が走る。
「なるほどなぁ」
形成はこちらが有利なはずなのに眞奉が僅かに動揺したのが分かった。
一体どういうこと?
「申し訳ありません、巫寿さま。私の弱点に気づかれました」
弱点?
その言葉にハッと息を飲む。
十二神使は穢れを嫌う言祝ぎの生き物。守ることはできても、相手に攻撃したりましてや相手を殺めることはできない。
思えば眞奉の剣さばきは受け流すことがメインだった。伊也に当たったそれは刀を弾いたことによって刃の起動が変わって当たったもの。初めから眞奉は攻撃していなかった。
もし伊也がそれに気付いたんだとしたら。
「あははッ、崇高な生き物は制約が多くて面倒やなッ!」
これまで間合いを取って攻撃していた伊也が一気に眞奉との距離を詰めた。咄嗟に短剣を構えるけれど、伊也の初太刀が来ずただ構えるだけになる。
眞奉は短剣を投げ捨てると、勢いよく両手を前に差し出す。手のひらで赤い炎がぼわりと揺れたけれど間合いはもうゼロだ。咄嗟に胸の前で交差させると、伊也が土を蹴り上げて宙を飛んだ。その勢いのまま眞奉の交差した腕を蹴り飛ばす。
無防備になった眞奉の腹に怪し火が放たれた。短い呻き声と共に眞奉の身体が後ろに飛ばされる。
体勢を崩して地面に転がる姿が見えた頃には、伊也の顔はもう目の前に迫っていた。



