伊也も短剣に気を取られていたようで怪し火の威力は弱い。これだったら私にでも防げるはずだ。
「祓え給え 清め給え」
どの祝詞よりも短く洗練された、私たちを守ってくれる詞。
「神ながら守りたまえ 幸《さきわ》給えッ!」
穢れを祓い幸福を願う祝詞、略拝詞。
眞奉の鼻先まで迫った怪し火が花火のように弾け飛んだ。火花の中をくぐり抜けて短剣を振りかざす。
ガキンッと金物同士がぶつかり合う音が響く。間一髪のタイミングで伊也は顔の前で短剣を弾く。切っ先が触れたのか伊也の頬に赤い線が走った。堪えるような呻き声をあげる。
眞奉の攻撃と私の守りがはまった。この調子で連携すればいけば上手く伊也の攻撃を防ぎつつ反撃の機会があるかもしれない。
「こんの、クソ餓鬼がァッ!」
激昂した伊也が出鱈目に怪し火を放った。略拝詞がまだ効果を発揮しているおかげで眞奉に当たることなく弾ける。流れた怪し火はすかさず鎮火祝詞で燃え移る前に消していく。
二人の刃が激しくぶつかり合い火花を散らす。刃物の扱いは眞奉の方が慣れていた。受け流すように降りかかる刃を捌いている。
息の詰まった悲鳴が聞こえた瞬間、伊也が間合いを取った。ゆるりと首を持ち上げた。指の隙間から赤い血が滴りおちる。血走った目が私を握りつぶすように捉えたあと、眞奉を捕まえる。
「────ああ、そうか」



