言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


私も魑魅に襲われた時実家を荒らされて、為す術もなく座り込んでいた時の絶望はよく覚えている。

それにこの火柱はかなり危険だ。風が吹けば火の粉も飛び散る。社は庇角院の裏手にあってもちろん木造建築だ。本殿には避難しているさとの人達、神楽殿には傷病者がいる。万が一燃え移れば大変なことになるのは明白だ。


「先に風や、風があるから火の威力が上がっとる! 風さえ無ければ火は大した事ない!」


鬼子ちゃんを抱きかかえて文鬼先生がそう叫んだ。瞬時に恵衣くんと信乃くんが目配せをすると天司に向かって走り出す。


「巫寿! お前は何とかしてその妖狐の邪魔をしろ! 戦わなくていい、自分の身を守りつつそいつをこの場に足止めするんだ!」


なるほど、力のある男子二人で天司を相手取るつもりなんだ。

分かった、と私が答えるよりも先に伊也が耳に残る嫌な笑い方で肩を震わせる。


「足止めて。うちは巫寿ちゃんを追いかけてきたんやし、どこにも行かんから────安心して!」


言い切ると同時に手の平くらいの大きさの何かを帯の間から引き抜いた。両側に引っ張った片方から白銀がぎらりと光る。

それを短刀だと捉えるのとほぼ同時に、伊也が私目掛けて屋根を飛び降りた。刃を振りかざした伊也が迫ってくる。もちろん私が武器なんて持っているはずもなく、選択肢は「避ける」しかない。