「ああッ……! 庇角院が!」
悲鳴に近い嘆き声は鬼子ちゃんのものだった。泣き出しそうな顔で炎に包まれる庇角院を見つめる。
「行ったらあかん鬼子!」
「でも先生ッ!」
今にも飛び出そうとする鬼子ちゃんの肩を文鬼先生が必死に押えた。
「お前ら鎮火祝詞だ……!」
恵衣くんの言葉に我に返った。
そうだ、呆然としている暇はない。敵は目の前にいるんだから。
皆の柏手が揃うよりも先に、天司が腰巻に差していたヤツデの葉を引き抜き頭上から高く振り下ろした。
旋風は周りの空気を集めて竜巻になり、枯葉も土も何もかも巻き飲んで庇角院にあたる。風に煽られて威力をました青い炎は火柱となって轟音を辺りに響かせた。
激しい熱風を吸い込んで喉が焼け付く感覚に一瞬息が止まった。袖で口元を隠して激しく咳き込む。涙で滲んだ視界で庇角院を見上げる。
屋根は音を立てて崩れ落ち、柱には亀裂が走っていた。
「いやぁ……ッ! 庇角院が、庇角院が!」
「鬼子!」
普段とは打って変わって取り乱し泣き叫ぶ鬼子ちゃんの横顔にギュッと胸が締まる。
以前鬼子ちゃんはこの庇角院で育ったと話していた。鬼子ちゃんにとっては実家みたいなものなのだろう。



