口を閉ざしていた烏天狗がゆっくりと私たちを見渡す。
「一戦交える相手に、名乗らぬは失礼か」
屋根から飛び降りた烏天狗は片膝を着いて地面に着地した。深く頭を下げた体勢のまま続ける。
「某、天狗の妖、烏天狗の天司と申す。何卒よしなに願い申し上げ候」
そう言い立ち上がった天司にみんなが目を丸くする。
屋根の上に立っていたから気が付かなかったけれど、天司と名乗るこの妖、かなり大きい。目測だけれど恐らく背丈は190近くあるだろう。横にも大きく恰幅がいい。
「まーたクセ強いん出てきよったで……」
今はそうじゃないでしょ信乃くん。
心の中で激しくつっこみつつ、実は私も同じことを考えていたのでなんとも言えない気持ちになる。
「天司……聞いたことがある。確か烏天狗族の次期頭領に選ばれていたはずだ」
恵衣くんの言葉に信乃くんは深く頷く。
「代替わりはしとらんけど、ほぼ取り仕切っとんのは次期頭領の天司や。つまり────」
烏天狗族はそっち側ってことか。
信乃くんのいう"そっち側"の意味を直ぐに理解して言葉を失う。
烏天狗族を率いる天司、天司と共謀する伊也、伊也は神々廻芽に従っていて、神々廻芽は空亡を利用している。
つまり烏天狗族が、神々廻芽側についたということだ。だとしたら伊也が従える黒狐族も同じように考えられる。黒狐族も神々廻芽に従っているんだ。
全部の事柄が繋がっていき、やがてひとつの答えに辿り着く。
各地で起きているこの戦は、神々廻芽が妖一族を引き込むために起こしたものなんだ。



