間違いなく「先見の明」が発動した。
これまでに比べればほんの僅かな情報だったけれど、しっかりと私たちに危険が迫っていたことを教えてくれた。
そしてこの青い炎は────。
「ホンマちょこまかと子ネズミみたいによう動く子らやね」
「至極煩雑」
声の方に顔を向ける。庇角院の屋根の上だ。火花を散らす炎に顔を顰めながら目を向けた。
「伊也姉……」
今にも泣きそうな声がその名前を呼ぶ。
大きな団扇で仰ぐような風の塊が炎の壁に穴を開ける。その向こう側に立ちこちらを見下ろす二人の人物と目が合った。
「伊也姉て。まだそないな呼び方してんの? これやからあんたは甘いねん────信乃」
赤い瞳を細め、伊也は露骨に嫌悪を顕にした表情で吐き捨てる。一瞬、頬を平手打ちされたような酷く傷ついた顔をした信乃くんはギュッと唇を噛み締めて屋根の上を睨む。
「……隣の大漢はお前の彼氏か」
「あははッ、あんたにそんな笑いのセンスあったんやな? てか巫寿ちゃんさぁ、そのへん情報共有しといてもらえる? いちいち頭から説明するん面倒なんやけど」
伊也が隣の大柄な男をチラリと見た。里の外れでぬらりひょんと共に現れた烏天狗だ。



