その後しばらく怪我人の治療に当たっていると、「巫寿ちゃん!」と名前を呼ばれた。ほぼ同時に沢山の手が自分の白衣を掴む。
振り向くと庇角院の子供たちが焦った表情で立っている。
どうしたの、と尋ねるよりも先に子供たちが泣きそうな顔で私に詰め寄った。
「巫寿ちゃん文鬼先生こっちきた!?」
「文鬼先生? 皆と一緒に本殿へ避難したんじゃなかったの?」
庇角院で子供たちの面倒を見てるい院長先生だ。
庇角院は社の裏側にある。避難の報せが出たら真っ先に伝わるはずだし、現に子供たちがここにいるということは避難の報せはちゃんと伝わっているという事だ。
「文鬼先生と一緒に本殿へ来たんじゃないの?」
うぐうぐと嗚咽を漏らす子供達の背をさする。
「鬼平太が、庇角院にかんざし忘れたって泣いて、文鬼先生が取りに戻ったんや!」
「だってあれは死んだお母ちゃんの形見なんや……!」
名前が挙げられた子鬼の少年が顔をくしゃくしゃに歪めてそう訴える。堪えきれなくなった涙がポロポロとこぼれた。
「もう三十分も経ったのに、まだ戻ってこやんねん!」
「みんなで探したけど本殿にもこっちにもおらん!」
「もしかしたら文鬼先生、敵に捕まったんと……」
「縁起でもないこと言うなや!」
皆の表情が一気に不安に染る。
庇角院は社の裏手にある。ここから五分とかからない距離だ。確かに三十分は遅すぎる。



