「恵衣くん?」
「お前その首どうした」
「首?」
さっきから汗が伝っている感覚はあったけれど別に何も。
拭って確認してみると、少しピリッとした痛みが走って手の甲に血がついていた。「え?」と目を瞬かせる。
「怪我したのか」
「え、いや……あ!」
そういえば伊也に首を掴まれた時、彼女の鋭い爪がくい込んで一瞬痛みが走った覚えがある。恐らくその時の傷だ。
嘉正くんが「大丈夫なの? ソレ」と聞いてきたのはこの怪我のことだったのかもしれない。
「あ、これなら血は出てるけどそこまで痛くないから大丈────」
「ちょっと黙ってろ。……触るぞ」
私の返答を確認するまでもなく手を伸ばした恵衣くんは指先で私の首元に触れた。まるで羽で触れられているような加減された力で触触れる。
動くな、と言われたからと言うよりも驚きで固まった。
明朗な声で治癒の祝詞が奏上されると同時に触れられている喉がじんわりと心地よい熱を持つ。恵衣くんはゆっくりと手を離した。
「え、恵衣くん! 貴重な言霊の力なんだし私なんかよりもっと重傷者に……」
「うるさい。力の使い所は俺が決める」
むすっとした顔でそういった恵衣くんはくるりと背中を向けて大股で歩いていった。
喉元を撫でる。痛みはもうない。
「あの、ありがとう……!」
遠ざかる背中にそう叫んだ。



