盛り上がるふたりに息を吐いた。

藁に金槌と言えば、(うし)の刻参りの基本装備だ。


「二人とも聖仁さんのこと呪おうとしないの」


ちぇー、と唇を尖らせた二人は駄々をこねるようにその場に寝っ転がった。

夏休みなのに私達が稽古場にいるのには、もちろん理由がある。二日前から神楽部では夏合宿が始まったからだ。

私が所属する神楽部では毎年八月の上旬に一週間ほど合宿を行っていて、私は今回が初参加。というのも去年は一学期が終わるギリギリまで長い間入院していたせいで、顧問の富宇(ふう)先生から参加のお許しが降りなかったからだ。

先輩たちから「地獄だぞ」と聞かされていたけれど、なるほど確かにこれは地獄だ。あと四日間もこの日々が続くと思うと気が遠くなりそう。


「おーい、事務員さんから扇風機借りてこれたぞ」


入口で一礼して中へ入ってきたのは、扇風機を一台ずつ肩に担いだ神楽部副部長、瑞祥(ずいしょう)さんだった。

まるで女神でも降臨したかのように、部員たちからワァッと歓声が上がる。


「瑞祥。言ってくれたら俺も手伝ったのに」


他の部員と雑談していた聖仁さんがパタパタと駆け寄ってきて親しげに声をかけた。

部長と副部長であるこの二人は幼馴染でもある。