「何を……ッ」
「中をよく見なさい!」
勢いよく怒鳴られて、反発心を抱きつつもちらりと神楽殿の中に目を向ける。
広がる光景に言葉を失った。
観覧用に並べられていた長椅子は取り払われて、代わりに薄い敷き布団が所狭しと並べられていた。その上に横たわるのは白衣を真っ赤に染めた、神職さま達だった。
四方八方から呻き声が聞こえて、治癒の祝詞を奏上する焦った声がそれをかき消す。鉄っぽい生臭い匂いは血の匂いだった。
「貴方は鬼市さんに頼まれて神楽殿へ配置されたはずでしょう!? 今にも瀕死の状態の大怪我を負った仲間を放っておいて、転んでできた程度の擦り傷を治して回って感謝されて、それはいい気分でしょうねッ!」
羞恥なのか怒りなのか、カッと顔が熱くなる。
そうじゃないと反論しようとしたけれど出来なかった。周りが見えていなかったのは紛れもない事実だ。
言霊の力は無尽蔵じゃない、使い続ければ減っていく。使い所を間違えてはいけないかったのだ。確かに里の人たちの治療は大切だけれど、私の力はもっと他の場所で使うべきだった。
「少しは考えて行動してください。二度は言いませんよ」
ごめん、謝るよりも先に鬼子ちゃんは怪我人の元へ走り出す。グッと拳を握りしめ、私の神楽殿の中へ駆け出した。



