言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


眞奉のおかげで後退する戦線を避けて里の中心まで戻ってくることができた。

案の定往来は黒狐族の襲来を聞きつけた里の人達が慌てふためき逃げ惑っている。避難のために社の本殿が解放されると聞いたけれど、思うように伝わっていないのか四方八方に走っている。


「避難場所が里の人達にちゃんと伝わっていないみたい。眞奉、皆を本殿へ誘導するのを手伝って」

「御意に」


すぐさま私から離れた眞奉に私も走り出す。


「避難先は本殿です! 社の本殿へ向かってください!」


思い切りそう叫べば、子供と奥さんの手を引いた男性に肩を掴まれた。


「それはほんまか!? 黒狐族はそこまで迫ってるから、外れの方へ逃げろと聞いたで!」

「違います! 外れの方が戦線なんです! 本殿へ逃げてください!」


一瞬躊躇いをみせた里の人たちも私の緋袴をみて信じてくれたらしい。周りの人達にも「避難場所は本殿や!」と声をかけながら方向を変えて走り出した。

良かった、と胸を撫で下ろすまもなく、道のすみに座り込んで泣きじゃくる子どもの姿を見つける。

五六歳くらいだろうか、人型をしているけれど耳も尻尾も出ているから恐らくまだ妖力を上手く操れない子供なのだろう。