「鬼市くん!」
神職さまたちに囲まれていて思うように近付けず、遠くから名前を呼ぶ。私の声に気付いた鬼市くんは押し退けるようにして私に駆け寄った。
「巫寿! 怪我は!?」
「私なら平気……! それよりも鬼市くんから作戦を聞けって神職さまが」
ちから同士が弾けるような轟音が響いて咄嗟に身を縮めた。振り返れば酷い煙が立ち上っており様子を伺うことが出来ない。
厳しい表情で目を向けた鬼市くんは「加勢しろ!」と声を荒らげる。
「黒狐族はうちの神職達が里の外れで足止めしている。もう間もなく戦線が後退してここが最前線になるはずだ。そうなる前に巫寿は社に戻って女子供の避難を手伝ってくれ」
私だけ社に戻る? 私以外のクラスメイト皆は最前線で戦っているのに……!
私の考えを読んだのか、鬼市くんが両肩を掴んだ。
「社の神楽殿に怪我人が運ばれてくるから、巫寿はそこで手当を手伝ってくれ。どうか、仲間たちを頼む」
あまりにも真剣な目に「でも」なんて言葉は直ぐに消え失せた。私に出来ることなんて少ないんだ、だったら自分の力を最大限発揮できる場所に行こう。
力強く頷く。鬼市くんが私の肩に力を込めた。
「終わったら後ろに控えてる十二神使の説明も頼む」
「分かった!」
走り出した鬼市くんの背中を見送り、私も社へ向かって走り出す。



