「なんとこんな幼子だったとは、老爺心がちと痛みますな。しかし我らが年来の悲願の為にも、致し方なかろう」
ぬらりひょんが頬笑みを浮かべた。冷たい瞳が私をその場に縛り付ける。
「その名に刻まれた天命を恨みなされ」
その名に刻まれた天命……?
言い終わるとほぼ同時に烏天狗の錫杖が高らかに鳴り響く。目に見えない何かがとてつもない勢いで風を切って迫り来るのが見えた。
駄目だ、どの祝詞でも間に合わない!
衝撃に備えて両手で顔を覆った次の瞬間。
「────よく持ちこたえた、巫寿!」
聞き馴染みのある声が私の名前を呼ぶ。
衝撃が走る音がして勢いよく顔を上げた。皺ひとつ無い白衣に浅葱袴の後ろ姿に思わず涙が滲む。
「恵衣くん……ッ!」
俺らもいるぞ!そんな声とともに肩や背中が叩かれる。私の隣に並んだクラスメイトたちの横顔に力が抜けて座り込みそうになった。
「皆も!」
「巫寿さんは一度下がって、鬼市さんから作戦を聞いてください!」
神職さまたちも来ているらしい。知り合いの神職さまが私にそう叫ぶ。後方で指示を飛ばす鬼市くんの姿を見つけて「はい!」と叫び走り出した。



