人間と何も変わらない。むしろ妖力というとてつもない力を保有している分、人間よりも恐ろしい。
「なんや、ジジイに狗かいな」
伊也は二人の姿を認めると煩わしそうに目を細めて息を吐く。僅かに腕が緩んだ隙を見逃さなかった。
勢いよく膝をおってその場にしゃがみこむと、あれだけ力強く掴んでいた伊也の手がいとも簡単にするりと解けた。
しゃがみ込んだ勢いを利用してそのまま眞奉のものへ走り出した。
「こんの、クソガキッ……!」
伊也の怒鳴り声と共に背後でボワッと炎が膨らむ音がして身をすくめた。けれど振り返らずに走り続ける。炎は私の背中で弾かれた。眞奉が目を見開いて手を差し出している。私の背中に結界を張ったらしい。
眞奉なら絶対に私のことを守ってくれると思っていた。
伸ばされた眞奉の手を掴む。なだれ込むようにその胸に飛び込んだ。
眞奉の食いしばった口から苦しそうな呻き声が盛れる。振り向くと伊也の放った怪し火が今にも眞奉の結界を突き破ろうと迫ってきている。火花が弾ける度に卵色の膜にひび割れのような稲妻が走った。
私も何か、眞奉を援護しないと。術者である伊也に攻撃しないとまた押し負けてしまう。何か、何かないか。
きつく目を瞑って邪を貫く柏手を打ち鳴らした。



