「集めてるんでしょ、かむくらの神職たち。動き出してるんでしょ、再戦に向けて」
「御託はいいとにかく私達も加えろ」
ダンッと机の天板が叩かれる音がした。食器が跳ねて箸が転がる。
「駄目だ! 子供が何言ってる!」
「あはは、アラサーのオッサンに何言ってんの。妖じゃあるまいし」
「それでも駄目なものは駄目だ! 足手まといだ!」
「芽の言祝ぎを相殺できる可能性があるのは俺だよ。つまりアイツを捕まえるにしろ殺すにしろ可能性があるのは俺だけってこと」
殺す、その言葉に息を飲んだ。
親友であり唯一無二の兄弟に向ける言葉にしてはあまりにも鋭利だった。
「昔に比べて技術も知識も経験も格段に上がってる。子供だから足手まといだからなんて理由で納得するわけないだろッ!」
薫先生の声に芯が通った。
「安心して。親友だ兄弟だって理由で絆されるほど、俺も嬉々も優しくないから」
これまで平坦だった声色に初めて感情が見える。怒っているように聞こえるはずなのに、今にも深い悲しみに飲み込まれそうなほど頼りない。
これ以上は聞いていてはいけない気がして、そっと座敷から離れる。
早足で部屋へ戻りながら、胸騒ぎはどんどんと大きくなっていく。
神々廻芽、空亡、かむくらの神職。
これから一体何が起ころうとしているのか、私には分からない。
ただ初めて妖と対峙して殺意を感じ取ったあの時の感覚が、遠くから少しずつ近付いてきているような気がした。