後ろで一つにまとめていた髪を鷲掴みにされて視界ががくんと激しく揺れる。一瞬息が詰まったあと、顔中の皮膚をとてつもない力で引っ張られる感覚に声をあげようとして、できなかった。研いだばかりのナイフのような鋭い爪が喉元にあてがわれる。
ぴり、と紙で指先を切った時と同じ痛みが走り、生暖かい雫が首元を伝う。
「巫寿さま……ッ!」
ずっと背中を見ていたはずの眞奉の焦った顔がこちらを見つめている。
身体にまとわりつくようなねっとりした声が鼓膜を震わす。
「巫寿ちゃんはこの場で殺すし、誰なのか教えても構わへんねんけど……伝えた瞬間他のお仲間さんに連絡されてしもたら、うちが芽さまに怒られるしなぁ」
確かに内通者が誰なのかまで分かれば良かったけれど、今の会話だけでも十分に収穫はあった。
彼女は私たちの中に裏切り者がいることを肯定した。薫先生の憶測が確信に変わったということだ。
「ま、あんたのすぐ側におる者やってことだけは教えといたる」
私の……すぐそばに居る人?
先生、神職さま、クラスメイトに先輩後輩、みんなの顔が順番によぎる。
みんなの誰かが私たちを裏切ったなんて信じたくない。けれどどう考えても否定できない状況に顔を顰め俯いた。



