言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


神役諸法度の授業を思い出す。

野狐の捕縛は拘束が基本だけれど、万が一相手が攻撃してきた場合や自身の身が危険に晒される場合のみ神職は攻撃することを許されている。

彼女は私たちに向かって怪し火を放ち、私たちは危険に晒された。つまり、今がその時だ。

細く深く息を吐いた。


────分かった。


横目で眞奉の顔を見る。僅かに顎を引いて頷いた。


「それにしても、ホンマ偶然やなぁ。巫寿ちゃんがこのタイミングで八瀬童子の里におるなんて。あんた、いい意味でも悪い意味でも運の強い子やね」


宙で止まっていた煙幕が僅かに揺れる。彼女が移動しているのだろう。声の方角は相変わらず分からない。

落ち着くんだ。飛扇(ひせん)先生の組討演習(くみうちえんしゅう)を思い出せ。

"身の守り方を考えつつ、相手の情報も集めること"

私が今しなければならないのは、次の攻撃を予想して身の守り方を考えること。そして彼女の言葉から情報を集めること。


彼女は私が八瀬童子の里にいるのが想定外だった、という口振りだ。最初に会った時も私を見つけたことに驚いていた。つまり最初から私がここにいると分かっていて里に来たわけではなさそうだ。

つまり狙いは最初から八瀬童子の里にあったということか。


眞奉、今声を出したら相手に居場所はバレる?


心の中でそう問いかける。


────こちらも煙幕に隠れて動いていれば、三度までなら問題ないかと。


三回、その三回の間で有益な情報を聞き出さなければならない。