一体何が起きているの……?
「巫寿ちゃん、ちょっとうちとお喋りしよや。別にこの後殺すし、今なら何でも答えたるで」
煙幕の向こうで彼女がくすくすと笑う。視界が悪いせいでその声がすぐ側から聞こえるし遠くから聞こえる気もする。
ドドドッ、と鼓動が緊張で走る。
これなら視界を晴らした方がいっその事────。
なりません、と頭の中に眞奉の声が響く。久しぶりの感覚にびくりと体が跳ねる。
眞奉たち十二神使は念話と呼ばれる直接相手の頭の中を読み取り言葉を使わず語りかけることができる。どうやら私の考えを読み取ったらしい。
眞奉の声が頭の中に流れてくる。
────こちらの視界が悪いということは、相手も同じ条件。私は巫寿さまをお守りできても、相手に攻撃はできませんから、利用して身を隠すのが得策です。
攻撃ができない?
眉根を寄せて、すぐに気づく。
そうだ、十二神使の原動力は主の言祝ぎの力。つまり十二神使の力の性質は言祝ぎということ。言祝ぎは祝福し癒しを与える力で、誰かを傷つける力はない。
────私の後ろに隠れてください。あの程度であれば防げるでしょう。巫寿さまは折を見て可能であれば反撃を。
反撃、という言葉に言葉を詰まらせる。
思えばこれまで何度も危ない状況に立たされてきたけれど、自分の身を守ることや清祓で精一杯で私自身が誰かを攻撃することなんて一度もなかった。



