緊迫した状況なのは分かっているのだけれど、炎を閉じ込めた様な燃える瞳に「なんて綺麗なのだろう」と息を飲む。

十二神使という妖は、こんなにも美しい生き物なのか。


青く燃える怪し火は眞奉の炎によって弾かれた。散った火花は宙に霧散し、土に落ちた火は黒い煙をあげて再び燃え始めた。


「巫寿さま、お怪我はございませんか」

「眞奉のおかげで火傷ひとつない……! ありがとう!」

「左様ですか」


相変わらずの淡々とした物言いだ。

眞奉に怪我がないか確認しようと顔を覗き込むと、まるで私の目から逃げるようにぐりんと顔を背ける。


「ま、眞奉?」

「目の前の敵から目を外らしてはなりません」


仰る通りだ。

少し引っかかるものはあるけれど、すぐに言われた通り黒い煙の向こう側を睨んだ。


早馳(はやち)風の神取り次ぎたまへ」


耳に嫌な残り方のする声が風神祝詞を紡ぐ。次の瞬間、空気中を漂っていた煙がピタリと動きをとめた。

時が止まったような光景に息を飲む。

止まった煙の隙間から、歪んだ赤い唇が見えた。


「はぁ、ほんま腹立つ。忘れとったわ。そういやあんた十二神使を使役しとったんやったな」


血の匂いすら感じる赤い瞳がこちらを鋭く睨んだ。