瓏くんが暴走して怪し火を放ってしまった時は他の皆と一緒に鎮火祝詞を奏上していたから気が付かなかったけれど、一年の時に比べて祝詞の効果が格段に上がっている気がする。

恐らく春休みにかむくらの社で本来の言祝ぎの量に取り戻したからだろう。

この調子なら鬼市くんが神職さまたちを呼んできてくれるよりも前に全ての鎮火が終わりそうだ。

大丈夫、いつも通り落ち着いてやれば上手くいく────。




「あらぁ? 誰か思たら、巫寿ちゃんやん」




黒板を引っ掻くような耳に残る嫌な音が真後から聞こえて、心臓の音が一瞬止まる。

弾けるように振り返り、ほんのすぐ側に立っていたその人物に大きく目を見開いた。