「再会した時にはっきり自覚した。俺は初めてここで会ったあの瞬間から、巫寿に惚れてた」


どくん、と心臓が大きく跳ねる。


「巫寿が好きだ」


真剣で一途で、揺るぎない瞳。その黒い瞳には私だけが映っている。

過保護でシスコンな兄のおかげで、過度な愛情表現にはかなり慣れている。日常的に「好き」やら「愛してる」やらと囁かれてきたら慣れるのも仕方ないだろう。

でもこれは────かなり、耳が熱い。


「前に気長に待つって言ったけど、ちょっと待てそうにない。敵は多いみたいだからな、気持ちは伝えておきたかった」


確かに幽世のあちこちで戦が起きている今、妖である鬼市くんもそれに巻き込まれる可能性だってある。

今出来ることをしておきたい、という気持ちは分かる気がした。


「真剣に俺の事、考えてほしい」


一ミリも逸らせないほど、真っ直ぐな眼差しが私を射抜く。

鼓動は耳の横にあるくらいバクバクと煩かった。


思えば鬼市くんに好意を向けられてから、ずっとのらりくらりと逃げていた。初めて異性から向けられた好意が恥ずかしくて、戸惑う気持ちがあったからだろう。

でも、それじゃダメなんだ。

こんな私を好きになってくれて、本気の気持ちを伝えてくれた。だったら私もその言葉を真摯に受け止めて真面目に答えるべきなんだ。