次の日、稽古をしていると道場にミコトとその家族が尋ねてきた。ミコトのお父さんとお母さんには沢山お礼を言われて少しくすぐったかった。

ミコト達は旅行に来ていて、今日里を経つらしい。なぜだか凄く寂しかった。

お頭と一緒にミコトたちを見送ることになった。

ミコトのお父さんは大きなカメラを構えて「君も入ってよ」と俺に行った。ミコトの隣に並んで、写真を撮った。


最後の最後に「またあそぼうね」と手を振って、次の旅先が気になるのかすぐにお母さんに話しかけていた。


「あの子と仲良くなったのか?」


遠くなる背中に手を振り続けていると、お頭がそう尋ねた。


「うん」


ミコト、小さな女の子。俺に泣き虫でもいいと言ってくれた女の子。俺に大切な言葉をくれた女の子。

かならずまた会いたいと思った。でもせめて今度は泣いていない時に会いたい。


一瞬間後、俺宛に小さな封筒が届いた。ミコトのお母さんからお礼の手紙とともに、最後に撮った写真も入っていた。ミコトは巫寿という字を書くらしい。

満面の笑みを浮かべる巫寿に思わず頬が緩む。

貰った写真は引き出しの奥に大切にしまった。