「みことにまかせて! みこと、おまじないしってるの」
「おまじないって、なに」
「いたいのとんでくおまじない」
女の子はミコトというらしい。
ミコトは俺の膝を両手でそっと包み込んだ。小さなその手のひらは暖かくて少しくすぐったい。
ミコトは少し微笑んで目を瞑るとすっと息を吸い込んだ。
「────いたいの いたいの とんでいけ」
ミコトの手のひらから柔らかい卵色の光が漏れた。それは春の日に浴びるお天道様の光のようにまろやかで心地よい。
同じ言葉を三度繰り返したミコトがそっと手を離す。擦り傷は綺麗に治っていた。
「ミコトは……言霊の力をもってるのか」
「ことだまのちから?」
少女はどれほど自分が凄いことをしたのか分かっていないらしい。
自分が操れるようになろうと必死に稽古している力だった。
「もういたくない?」
俯くように頷けばミコトは嬉しそうに「ほんとに?」とミコトがまた困った顔をした。まだ自分は曇った顔をしているらしかった。
「ほんとは、ここいたい?」
小さな指が己の胸を指した。
尋ねられた瞬間、思い出したように目尻がぶわりと熱くなった。



