芽さんの狙いが本庁……? どういう事? 狙いって何だろう。
奉納祭の時、芽さんと対峙した嬉々先生は彼が追われている身であるようなことを言っていた。
芽さんはどうして追われているんだろう。追われている身でありながら、本庁になんの目的があるんだろう。
芽さんは一体何者なの……?
「もう13年経った。今まで何も動きがなかった方がおかしいんだ」
「ああ……そうか。もうそんなに経ったか」
「ねぇ、オジサンたち俺に遠慮してる? だったらそういうのいいよ。いちいち気遣われる方が面倒くさいから。箝口令は敷かれてるけど、当時の人らはみんな知ってることでしょ」
神職さま達が少し困惑した空気を感じ取る。薫先生はそのまま続けた。
「芽が空亡側について、13年だ」
あまりにも予想外な言葉に一瞬思考が停止した。
声が漏れそうになって咄嗟に口を塞いだ。心臓の動きはゆっくりなのに、まるで耳元で脈打つように体の中で響いている。口を塞ぐ手が小刻みに震え、反対の手で手首を握りしめた。
芽さんが、空亡についた……?
「13年経って少しずつ動き始めてる。あいつが今まで何もしてこなかったわけがない、ずっと準備はしてたんだ。その一つがおそらく去年の一学期に起きた一方賢の件。方賢を唆したのも芽で間違いない」
一方賢────まねきの社の文殿で奉職していた権禰宜だ。よく文殿を利用していた私は方賢さんとは顔見知りだった。
彼は一学期の中頃、学校内に封印し保管されていた空亡の残穢を盗もうとして私達に見つかり、結果残穢に取り込まれてしまった。