「……嫌か? 上からの景色が綺麗だから、巫寿に見せたかったんだ」 少し眉根を寄せた鬼市くん。捨てられた子犬みたいだ。 心の底から私に綺麗な景色を見せたいと思ってくれている顔。その顔は反則だ。 よし、と胸の前で拳を作って気合を入れる。 「登ろう! 上からの景色、私も見てみたい」 目を弓なりにした鬼市くんは嬉しそうにひとつ頷いた。