ご飯は念願の肉巻きおにぎりを屋台で買って食べた。
食べ終えた頃に「巫寿、いいか」と鬼市くんから声をかけられる。おそらく祭りが始まる前に交わした約束のことだろう。
二人並んで社務所を出る。療養所に付き合って欲しいのだと思って歩き出すと「そっちじゃない」と引き止められる。
うん?と首を捻った。
「療養所じゃないの?」
「療養所? 違うぞ、連れていきたいのはあっち」
鬼市くんが指さしたのは療養所とは正反対の裏山だった。
裏山? どうして裏山?
そう訪ねると鬼市くんは「行けば分かる……かもしれない」と目を細める。
行けば分かる、ではなく分かるかもしれない。
曖昧な言い方に余計に困惑する。
迷いのない足取りで歩き出した鬼市くんに一抹の不安を抱えながらその背中に続く。
宣言通り裏山に足を踏み入れた鬼市くんはずんずん足を進める。人が歩けるように道は整えられていて、その緩やかな坂道を登っていく。
「麓から見たら結構険しそうに見えたけど、ちゃんと歩く道があるんだね」
「ああ。前は山頂に社があってここは参道だったらしい。山火事で被害を受けて今の場所に移したって聞いた」
「なるほど」
通りで歩きやすいわけだ。



