言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


閉鎖的な神楽殿の雰囲気が明らかにさっきよりも悪くなり泣きたい気持ちになった。


「えっと、お姉さんたち集中して練習したいから、みんなは一旦外に……」

「おいお前」


私の言葉を遮るように恵衣くんが声をかけた。

振り返るとそれは私に対してではなく、どうやら鬼子ちゃんにかけた言葉らしい。

凍てつくような雰囲気をまとい能面のように無表情の鬼子ちゃんが恵衣くんを睨む。


「お前笛の音聞いてんのか? 全然音に合ってない。こっちも舞に合わせる努力はするが、それでも限度ってもんがあんだろ。そもそも振りを間違えるってどうなってんだよ。神楽舞を奉納するって聞いてから少なくとも5日間は確認できる時間があったよな。練習を断ったって聞いてよっぽど上手いやつなのかと思ってたが、偉そうに練習を断れるレベルだとは思わないな」


長い沈黙が流れる。状況がいまいち分かっていない子供たちですら居心地の悪さを感じたのか、そそくさと神楽殿から逃げ出していく。

終わった。最悪だ。間違いなく修復不可能な亀裂が入った。

恐る恐る鬼子ちゃんの顔を見る。首から耳まで真っ赤にした鬼子ちゃんが涙目で私と恵衣くんを睨む。


「……ったく。時間がないからもう一度頭から────」


恵衣くんが言い終わるよりも先に神楽殿の扉が勢いよくバタンッ!と閉じる。

バタバタと遠ざかっていく足音が聞こえて、思わず天を仰いだ。