綿菓子が溶けるように、恵衣くんが奏でた最後の一音が柔らかく消えていく。たっぷり五秒の沈黙の後、神楽殿には子供たちの「わぁッ」という歓声で溢れた。
「巫寿ちゃん綺麗〜!」
「めちゃくちゃ上手やん!」
「すごぉい!」
額の汗を拭ってふぅと息を吐くと、目を輝かせた子供たちにあっという間に取り囲まれる。
すごいすごい、と喜ぶ子供たちに目尻を下げる。舞を褒めてもらえるのは純粋に嬉しい。
もう一回見せて〜と方々から裾を引っ張られ苦笑いを浮べる。
「おいガキ共、邪魔するならつまみ出す」
恵衣くんのひと睨みによって一瞬で口を閉じた子供たちは怯えるように私の背中に隠れた。
「でも本当に巫寿ちゃん、綺麗やったよ!」
一人の女の子が私の袖を引っ張って頬を桃色に染める。
「鬼子ちゃんより上手や! うち、巫寿ちゃんみたいな巫女さんになりたいなぁ」
子供の言葉というものは悪意がなく純粋で、だからこそ時に爆弾になる。
間違いなくその瞬間、空気がピシッと音を立てて凍りついた。背中に感じる激しい視線に振り返ることができなくなる。
「え〜? 鬼子ちゃんも上手やったやん」
一人の男の子がそう声を上げた。心の中でありがとう!と声を上げる。
「鬼子ちゃんも上手やけど、巫寿ちゃんの方が見てて楽しいもん」
「たしかに!」
ひい、と頬をひきつらせる。
子供たちの純粋な褒め言葉はとてもとても嬉しいのだけれど、本当に今だけは勘弁して欲しい。



