「悪いな、色々巻き込んで」
申し訳なさそうに眉をひそめ、細めた目で遠くを見つめながら呟く。
「手伝うって言ったのは私達だし、謝らないでよ」
「そっか、ありがとな。瓏にも感謝伝えないと」
「だね。一番の功労者だし」
祈願祭をしようという話になって場所に困っていた私達は、瓏くんが八瀬童子の新嘗祭が近日中に行われることを思い出してくれたおかげでとてもスムーズに準備が進んだ。
新嘗祭ではもちろん祝詞奏上が行われるのでお供えも神具も用意される。その後に続けて私たちの祈願祭を行うことで、場所や日程の問題だけでなくお供えや神具まで揃ったという訳だ。
八瀬童子属の現当主で宮司である鬼三郎さんに相談したところ、前日から祭りの運営を手伝うことを条件に了承を得ることが出来た。
そういう訳で私たちは今、社を借りるために容赦なくこき使われているという訳だ。
「ああ、そうだ巫寿。祭りが始まったら交代で社頭を巡回するくらいしか仕事がないだろ。手が空いてからでいいから、ちょっと付き合ってくれないか」
「鬼三郎さんに何か仕事でも頼まれたの?」
「いや、付き合って欲しい場所がある」
場所?
療養所だろうか。前回訪ねてからそんなに時間は空いていないけれど、もしかしたら容態が悪くなった患者さんがいるのかもしれない。
分かった、と頷くと鬼市くんはどこか嬉しそうに頬を緩めて目を細めた。



