何で鬼市くんは真面目な顔をしてそんなどうでもいいことを……!
そのせいで恵衣くんは耳まで真っ赤にして怒っている。
「ここが偶然空いてたから座ったんだろ!? 普通に考えて、男二人の間にわざわざ座るやつがあるかッ」
「嘉正の隣も空いてんだろ」
顔を向けるとニッコリ爽やかな笑みを浮かべた嘉正くんが、自分の隣の空いているスペースをトントンと叩く。
駄目だ、普段は制止役の嘉正くんまでもが完全に面白がってる。
「別に俺は座る場所なんてどこでもいいんだよッ!」
「へぇ……」
鬼市くんが目を細める。何かを試すような目だ。最後は「まぁいいけど」と呟いて何事も無かったかのように話を再開する。
やりきれない怒りでぶるぶると拳を震わせた恵衣くんは、分かりやすく不機嫌な態度で座り直した。怖い顔で地面を睨みつけているので今は話しかけない方が良さそうだ。
恵衣くんへの説明は後回しにして、話の輪に戻る。
「構成はこれでいいとして、神饌をどうするかだね」
そうだね、と息を吐く。
神事では神様にお供えする食べ物や飲み物、神饌が必須だ。飲み物はお酒か水、食べ物はお米や川魚、野菜などがあるといい。
「前に井戸の神事をした時に、料理酒とチンして食べるパックのご飯でやったよね」
くくくと喉の奥を震わせて来光くんがメガネを押し上げる。
懐かしいなぁと頬を緩めた。



