言祝ぎの子 陸 ー国立神役修詞高等学校ー


それは親心でそう言っているのだと思っていたけれど、一族のこれからを託すという意味でそう言っていたんだ。

あまりにもこれまでの私たちの生活とは違う環境に置かれた彼らに、どういう言葉をかけるのが正解なのか分からなかい。

唇をすぼめて俯いた。


「だったら、今の俺にできることをしようと思う」


普段からあまり表情を変えない鬼市くん。けれどその瞳には強い決意が宿っていた。

妖生態学の先生が、妖は仲間意識が強いと話していた。長い年月を共に生きるだけあって、同胞を大切に思う気持ちは人の何倍も強いのだと。

その強い想いが鬼市くんにそうさせたのだろう。


「なるほどね、それで平和祈願祭をやろうって思ったわけか。それで神事の構成は?」

「名案だと思うぞ。外野の俺らができることってそれくらいしかないしな〜。で、神饌とかちゃんと用意したのか?」

「だね! でもいきなり神具を借りて執り行うなんて、ちょっと無茶だよ。そもそも祝詞は考えてるの?」

「んで、俺らは何したらいいんだ?」


確かに神事となると色々用意が必要だろう。私は何ができるだろうか。

次々と質問する神修勢に目を丸くした鬼市くんは、戸惑うように私たちの顔を見廻す。


「手伝ってくれるのか」

「手伝うも何も、皆でやるんじゃなかったの?」


嘉正くんの言葉に固まった鬼市くんは、しばらくしてフッと表情を崩した。どこか嬉しそうににやりと笑った信乃くんがその肩に手を回す。