久しぶりに聞いた本庁派と神修派という言葉に、脳内の記憶を遡る。

確か神役諸法度に対する考え方の違いから生まれた派閥で、空亡戦が集結して二つの派閥は決定的に別れてしまったという話を以前聞いたことがある。

仲が悪いのにどうして本庁派のシンボルである庁舎をまねきの社の敷地内に建てたのか疑問だったけれど、なるほど、監視目的だったわけか。


「悪い。俺こっちに用があるから」


一階に着いたところで、下足室へは向かわずに足を止めて反対方向を指さした鬼市くん。

この先と言えば職員室と事務室くらいしかない。


「なんやお前、呼び出しか?」

「いや。神具を借りたくて」


信乃くんが神具?と怪訝な顔で聞き返す。

事務室の貸出名簿に名前を書けば神具を借りることが出来る。授業前に日直が代表して借りてくることはよくあるけれど、個人で借りる人は滅多にいない。

なんでまた、とみんなが首を傾げる。鬼市くんはゆっくりと口を開いた。


祈願祭(きがんさい)をしようと思う」